ソリューション営業の、罠!?遂行される戦略とは?

昔からある営業改革のコンセプトに「ソリューション・セールスへの変革」があります(言い方は、「コンサルティング営業」「トータル・ソリューション」などさまざまです)。

システム開発が変わりやすいかもしれませんが、1つ1つのシステム/製品を販売するのではなくて、お客さんの経営課題を解決するような提案をする。より大きく総合的な提案をします。
ただ最近は、「ソリューション・セールス」に移行するのは難しいといわれています。

少し前に日立が、ソリューション・セールス的な営業方法に移行すると戦略を立てたところ、結構多くの批評家の方々から「無理だ」と言われました。

「それを成功した会社がないから」という理由で。
けれど僕は、(ある意味)普通の会社がソリューション・セールスの移行に成功した例をいくつかみたことがあります。


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医薬業界、医療機器業界です。営業変革の流れがあったのですが、ちょうど当時、病院経営で「検査プロセスの最適化」とか「カルテをはじめとする、帳票の効率化」などの案件がありました。その分野でまさに「顧客の経営課題を解決する」サービスを提供する営業が生まれてきたのです。

一体どうして、製薬や医療機器業界では、他の会社ではほとんどうまくいかなかった「ソリューション・セールス」をできたのでしょうか。ここでは5つポイントをお話しします。







1.分野が絞られている。
「分野が狭く絞られている」からうまくいったと思います。
一般の企業で「ソリューション・セールス」を戦略とする時、ただ「お客さんの経営課題を解決する」というだけです。結果、いわれた営業の方々は、何をしていいのかわかりません。実は、戦略を立てている方も、具体的に何をやって欲しいのかぼんやりしていることがあります。

でも、医療業界でうまれたいくつもの「経営課題解決の事例」は、「医療業界の中の」「いくつかのワークプロセスを効率化する」ことに絞られていました。

結果、個々の営業さんたちにとって、求められていることが明確でした。情報共有も、必要な勉強もやりやすかった。十分な専門知識を備えることもできたでしょう。
実際に「戦略が遂行された」のは、やって欲しいことが絞られていて、戦略遂行しやすかったからです。



2.お客さんにニーズがあった。
ただ売り手が「これをしたい」と思っても、お客さんにニーズがなければできません。
特に「経営課題の解決」なんて、会社の中の一担当者が「それをやりたい!」と思っても、予算がつかない。権限がないからです。お客様企業の中の経営層が声をかけるからこそ、動くのです。つまり、お客さん側に「総合的な打ち手で、会社を変えていきたい」という考えがなければ、売れるものではありません。

一営業が、担当者に会いながら、ニーズもない「経営課題の解決」をどれだけ訴えたとしても、売れなかったのは不思議ではありません。

この点、病院は、「これからは病院も、経営をやっていかなければいけない」と言われ始めたところで、業界全体に大きなニーズがありました。



3.当時病院で働く人たちが、経営知識に乏しかった。
3つ目は、「2」で書いたように、病院側にニーズがあったけれど、病院経営者は、「経営をする知識」がなかったことも挙げられます。
病院数が増えて、病院も「集客」ならぬ「集患」をしなければいけなくなるなど、様々な変化があった時代です。それまでの「いい治療をすれば、成功する」という考え方だったので、いざ「経営を」といわれても、なにをやっていいかわからない。そこで、一般企業でもあり、普段から付き合いのあった医療系の企業に相談を持ちかけたのでしょう。

もしも十分な知識があったら、違う形になったのかもしれません。



4.それでも、その会社の営業全員ができたわけではない。
「やることが明確」で「お客さん側にもニーズがあり」「お客さんだけでは解決できなかった」のですが、それでも、営業担当者みんながソリューション・セールスができた訳ではありません。
できたのは一握りの「実力のある人」でした。医療系の企業にとっても、病院のワークプロセスを変えたことがないのには変わりはありません。その中で、的確に質問したり情報収拾したり、必要な変革をプロジェクトにまとめ上げたりするのは、それ相応の知力や胆力が必要です。

全員ではなく、一部に期待するというスタンスも大切なのかもしれません。


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これは「ソリューション・セールス」だけではありませんが、どんな変革でも、戦略的な意図を伝える時には、「ただ伝える」「ただ丸投げをする」のではなくて、戦略推敲しやすいような戦略にまで落とし込む必要があると思います。

僕はそのサポートをすることもありますが、経営層とさまざまディスカッションしながら戦略について考える作業をしていくと、戦略について経営者さん自身の理解が深まり、戦略自身が磨かれて行ったり、改善したりすることも多くあります。



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今日の、考えてみたい問い
○あなたは今、どんな戦略を考えていますか?
 ちゃんと組織に浸透するような戦略になっていますか?

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