社員のエンゲージメントについての考察。

昔から経営者さんたちは「もっとお客さんのことを考えて仕事してほしい」「経営の視点を持ってほしい」「普通は、もっとこう考えますよね?」という言葉を使って、スタッフの成長を願ってきました。
もっと考えてほしい、自分ごととして仕事にとりくんでほしい、と。

そういう願いを、今は「エンゲージメント」といいます。
ひらたくいえば、仕事に一生懸命とりくんでいる社員は、手を抜いたり適当さが目立つ社員と何が違うのかを分析したものです。
すこし「うちの社員は・・・」という視点と違うのは、「エンゲージメントを高める責任の多くを、会社側がおっている」と考えることでしょう。
「あいつがだめだ」と考えるよりも先に「自分たちはどう振る舞ったらいいのか」を考える。

マネジメントは「人間関係」ですから、労使どちらかが悪いわけではないのですが、問題を解決するときに「自分はどう変われるか」と、自分も問題の一部として考える力は、健康的な思考だと思います。

さて、そんな「エンゲージメントを高める」ために、一体何をしたらいいのかという話を、ここでは整理したいと思います。


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○エンゲージメントは、一緒に働く人との関係性が大事。
最初にお伝えしたいのが、「一緒に働く人との関係性」です。「会社、仕事に高いエンゲイジメントを示す」と抽象的に考えがちですが、結局、「一緒に働く『ひと』と良好な関係を気づいていること」が、会社へのエンゲイジメントにつながります。ここから、いくつか大切なポイントが出てきます。



○チームでの仕事がある。(同僚との関係性)
同じ仕事でも、「チームでの仕事がある」か、「自分で仕事が完結しているか」で、エンゲージメントの高さは変わります。医療の仕事は過酷ですが、業務の中にチームで行う仕事があるか、始業時間から終業時間まで決められた仕事をこなして、仕事を次の人につなぐだけの完結した仕事だけかで、仕事観はかわるのです。

一度考えてみたいのは、「ふだんルーティンでやってもらっている仕事にプラスして、他の人と一緒に行うチームの仕事を作れないか」ということです。

チームがなければ、「いい関係」も「悪い関係」もないですから。



○マネージャーとの信頼関係
拙著「場づくりリーダーシップ」でも書きましたが、マネジメントが良好な会社では、経営者やマネージャーの人たちが、手放しで信頼されています。尊敬されていて、好かれています。

この現実を考えると、僕は「スタッフにどうしたら信頼してもらえるか」という問いが、会社で権力をもち影響力を持つ人にとって、喫緊の課題、義務なのだと考えます。

では、どんな振る舞いが、信頼に繋がるのでしょうか。たとえば・・・

 ・現場に行って、あっというまに課題解決をしてあげる。
 ・スタッフの長所を理解して、その長所を生かす場を提供する。
  (たとえば、話をまとめるのが得意な社員がいたら、ミーティングの最後に、「今日の話を整理するとどうなる?」というふうに、ちょっとした仕事でOK)
 ・単にお金のためというのではなくて、お客さんのため、社会のため、「ビジネスの目的」を理解している。目的をいつもかっこよく伝えてくれる。

・・・などは、よく言われることです。



○戦略の重要性を理解し、共感できる。
会社が大事だと思っていることを、ちゃんと理解し、「それが大事だ」と思えていることも、エンゲージメントを高めます。会社の戦略を、わかる様に伝えなければいけませんし、「その戦略を遂行したら、会社が良くなる」と感じられるといいということだと思います。一方通行に、一時的的に戦略を伝えて「ちゃんと話したもん!」と思っているトップがいると、エンゲージメントは高まらないのです。

○方針を、オペレーションにちゃんと落とし込んでいる。
戦略や方針があっても、それがちゃんとオペレーションに落とし込まれていないことは、少なくありません。例えば、「お客さんを大事にする」といったときに、社員に一定の予算を提供して、お客さんのために自由に使える様にする、などの「しくみ、オペレーション」がないと、言葉は絵に描いた餅になります。自分が実現したい想いを、いかにオペレーションに落としていくのかを、会社は考えないといけません。


○働き方の自由さ。
すごく多くの調査で同じ様な結果が出ている様ですが、「副業」をやっていると、エンゲージメントが高まるそうです。それは、「安定のために正社員の仕事をして」「やりたい仕事のために副業をする」という、仕事の役割分担ができるからです。自分で自分の人生をコントロールしていると実感できるからでしょう。

これは、「副業をやった方がいい」という話ではないと思います。それよりも、人間は自由意志を持って働きたいけれど、多くの会社では、「制限された自由」しか提供できていないという問題なのだと捉えています。

似た様な調査で(こちらも、様々な調査で同じ結果です)、在宅ワークもエンゲージメントを高めます。いつ仕事をするのかをある程度自由に決められるので、人生をコントロールしている実感が湧くのでしょう。


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いくつかのポイントをお話ししました。この中には、例えば「仕事の仕組みを作る」とか「目標設定制度を導入する」とかという、基本的なマネジメント施策は入っていません。それらは前提として大事なことですが、ここでは特に「エンゲイジメントを高める」ことにフォーカスをして書きました。

「営業スキル」ってありますよね。
これは、普通の人がただ普通に振る舞ったのでは、営業で売ることが難しいからこそ存在するのだと思います。

「マネジメントスキル」や「リーダーシップスキル」も同じで、普通の人が権力を持って、普通に振る舞うだけでは、組織にいい影響を与えられないから存在するのだと思います。
社長であれ、課長であれ、権力者は「裸の王様」にならないように、どんな風に振る舞ったらいいのかと考えることが大切なのだと思います。

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今日の、考えてみたい問い
○エンゲージメントを高めるために、どんな工夫ができるでしょう?

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